システム開発会社とSIer、この二つの違いを明確に理解しないままプロジェクトを進めてしまうと、想定以上の損失を招く危険性があります。
たとえば、完成したシステムが実際の業務フローにまったく合わず、使い物にならないケース。
結局、追加で多額の改修費用が発生し、予算を大幅に超過してしまうことは珍しくありません。
また、開発のノウハウが業者側にしか蓄積されず、いつまで経っても自社でシステムを管理・改善できない「ベンダーロックイン」の状態に陥り、将来的な内製化への道が完全に閉ざされてしまうリスクもあります。
とくに、システムの要件が固まっていない段階で業者に丸投げしてしまったり、本当は内製化を目指しているのに、SIerと長期の保守契約を結ぶことは、コストの高騰を招く典型的な失敗パターンです。
この記事では、両者の違いから最適なパートナーを見極めるための具体的な評価軸まで、失敗しないベンダー選定の知識を解説します。
致命的な意思決定ミスを避け、自社のDXプロジェクトを成功に導くためには、まずシステム開発会社とSIer、それぞれの役割と特性の違いを正しく理解しましょう。
なお、株式会社AiPHAでは、お客様の業務フローに合わせたシステム構築を得意としております。要件定義の段階から伴走し、AI導入やDX推進に関するお悩みにも、お客様の状況に最適な解決策をご提案します。システム開発のパートナー選びでお悩みでしたら、ぜひ一度お気軽にご相談ください。

ベンダー選びを間違えると大きな損失につながるリスクがあります。
AiPHAは要件定義の段階から伴走し、業務フローに最適なシステムの開発を提案いたします。
システム開発会社とSIerの違いを押さえる
システム開発会社とSIerは、どちらもお客様の要望に応じてITシステムを構築する専門家集団ですが、その役割には明確な違いがあります。
一言でいうと、SIerがプロジェクトの企画から設計、開発、運用まですべての工程を管理する「総合プロデューサー」であるのに対し、システム開発会社はプログラミングなどの「開発」工程に特化した「技術のスペシャリスト集団」とイメージするとわかりやすいでしょう。
ここでは、両者の定義や担当する工程の違いを詳しく解説します。貴社のプロジェクトにはどちらのパートナーがより適しているのかを判断するための基礎知識を身につけていきましょう。
定義と担当工程の違い
システム開発会社はプログラミングやテストといった開発工程に特化することもあれば、企業によっては要件定義や設計などの上流工程も担う場合があります。
顧客の指示のもと、エンジニアの技術力を提供する「準委任契約」という形を取ることも多く、これは「システムの完成」ではなく「定められた期間内の作業」に対して対価が支払われる契約です。
一方で、SIer(エスアイヤー)とは「System Integrator(システムインテグレーター)」の略で、お客様の課題解決のために、システムの企画・コンサルティングから設計、開発、テスト、そして完成後の運用・保守まで、すべての工程を一貫して請け負う企業を指します。
契約形態としては、システムの完成を約束する「請負契約」が一般的です。
このように、SIerがプロジェクト全体を統括するのに対し、開発会社はより専門的な技術力でプロジェクトの一部を支えるといった形で、責任範囲と得意領域に明確な違いがあります。
システム開発会社とSIer|得意分野の違いから見る正しい選び方
システム開発会社とSIer、それぞれの得意なことやプロジェクトの特性を理解すれば、自社のプロジェクトに最適なパートナーはどちらなのか、自ずと見えてきます。
このセクションでは、それぞれの得意分野をより深く掘り下げていきます。
これらの違いを具体例と共に見ていくことで、あなたの会社が今進めようとしているプロジェクトの性質と照らし合わせ、どちらのタイプの企業に相談すべきか、その判断基準が明確になるでしょう。
システム開発会社の得意分野・プロジェクト
特定の技術領域に深い知見を持つシステム開発会社は、その専門性を活かせるプロジェクトで真価を発揮します。
たとえば、スマートフォン向けの特定の機能を持つアプリ開発、デザイン性の高いWebシステムの構築、あるいはAIやIoTといった技術を事業に取り入れたい場合などがこれにあたります。
これらのプロジェクトは、最新技術へのキャッチアップや、素早く改善を繰り返すアジャイル開発(短い期間で開発とテストを繰り返す手法)が求められることが多く、専門チームが小回りを利かせてスピーディに対応できるシステム開発会社が得意とするところです。
また、自社内に「こういうシステムが欲しい」という明確なビジョンや要件を定義できる人材がいる場合、開発会社は非常に強力なパートナーとなります。
発注側が舵を取り、開発会社がその技術力で応える形でプロジェクトを進めることで、コストを抑えつつ、高品質で専門性の高いシステムを迅速に手に入れられるのです。
SIerの得意分野・プロジェクト
SIerが強みを発揮するのは、会社の根幹を支えるような大規模な基幹システムの刷新や、経理・人事・営業など、複数の部署や既存システムを連携させる必要がある複雑なプロジェクトです。
こうしたプロジェクトでは、単一の技術力だけでなく、業務全体の流れを深く理解し、関係各所との調整を行いながらプロジェクト全体を管理・推進していく能力が不可欠となります。
企画段階から完成後の運用・保守までを一貫して任せられるSIerは、IT専門の部署を持たない、あるいはリソースが限られている企業にとって、非常に頼りになる存在です。
複数のベンダーや製品を組み合わせ、会社全体の視点から最適なシステム構成を提案してくれるため、発注側は細かな技術選定やベンダー間の調整といった煩雑な業務から解放されます。
長期的な視点で安定稼働するシステムを構築し、会社全体の業務効率化や生産性向上といった全体最適を目指す場合には、SIerが最適なパートナーと言えるでしょう。
SIer・システム開発会社のよくある失敗例
SIerとシステム開発会社、それぞれの強みを理解せずパートナーを選定すると、プロジェクトは典型的な失敗パターンに陥ります。
SIerとシステム開発会社の選定に失敗例として、以下のようなものがあります。
小規模なWebサイト制作を大手SIerに依頼すれば、その管理コストが費用を圧迫し、予算を大幅に超過してしまう。
特定の技術に強い開発会社に、複雑な全体設計が求められる基幹システムを丸投げすると連携不備や仕様の穴が次々と発覚してしまう。結果、手戻りが多発し、納期遅延とコスト増を招く。
こうした事態を避けるには、プロジェクトの性質と依頼先の得意分野を正しく見極める初期段階の判断が極めて重要です。
システム開発会社とSIer、どっちを選ぶべき?失敗しない評価軸
では、自社のプロジェクトを成功に導くためには、どのような基準でパートナーを選べば良いのでしょうか。
企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)の成否を分けるこの重要な選択で失敗しないために、以下の4つの評価軸について解説します。
これらの評価軸を一つひとつ確認していくことで、単にシステムを開発するだけでなく、ビジネス価値を最大化してくれる最適なパートナーを見つけられます。
事業目標との適合度
システム開発のパートナーを選ぶ際、最も重要な評価軸は「提案されたシステムが、自社の事業目標達成にどれだけ貢献するのか」という点です。
システム開発は導入が目的ではなく、あくまで「売上を10%向上させる」「問い合わせ対応コストを30%削減する」といった、具体的な事業目標を達成するための手段です。
そのため、ベンダーからの提案を受ける際には、そのシステムがどのようなロジックでこれらの目標達成につながるのか、具体的な説明を求めましょう。
たとえば、「この機能によって顧客単価が平均〇円上がると想定され、結果として売上目標に貢献します」といった、数字に基づいた費用対効果の試算を提示してくれるパートナーは信頼できます。
単に機能の羅列をするだけでなく、あなたの会社のビジネスを深く理解し、事業目標達成への道筋を共に考えてくれるベンダーこそ、選ぶべき相手なのです。
将来の変化に対応できる柔軟性があるか
ビジネスの世界は常に変化しており、今日最適なシステムが、5年後、10年後も最適であり続けるとは限りません。
そのため、開発を依頼するシステムには、将来の事業拡大や市場の変化に合わせて機能を追加したり、改修したりできる柔軟性や拡張性が不可欠です。
ベンダーを選定する際には、この将来性についてもしっかりと評価しましょう。
たとえば、以下のような点は重要なチェックポイントです。
- システムの構造が機能ごとに部品のように独立しており、追加や交換がしやすいかを考慮して設計されているか
- 他のシステムやサービスと連携するための外部の便利なツールとつなげられる構造(API)になっているか
特定のベンダーの製品や技術に過度に依存した囲い込みのような構成ではなく、オープンな技術を積極的に採用しているかどうかも、将来の選択肢を狭めないために確認すべきです。
目先の開発だけでなく、企業の成長と共にシステムも進化させていけるような提案をしてくれるパートナーを選びましょう。
運用を任せる体制やノウハウ共有の計画
システムは、完成して稼働を開始してからが本当のスタートです。
導入後の安定稼働を支える「運用・保守」の体制がどうなっているかは、必ず確認しなければならない重要なポイントです。
障害発生時の対応フローや、セキュリティアップデートの計画など、具体的なサポート内容を事前に確認しましょう。
さらに、将来的にシステムの管理・改善を自社で行う内製化を視野に入れているのであれば、ベンダーから自社へ知識や技術を移転してくれるかどうかが極めて重要になります。
たとえば、開発ドキュメントをきちんと整備してくれるか、システムの仕組みについて勉強会を開催してくれるか、運用担当者向けのトレーニングプログラムを用意してくれるか、といった点です。
ベンダーにすべてを任せきりにするのではなく、プロジェクトを通じて自社にノウハウを蓄積し、主体的にシステムを育てていけるような体制構築を支援してくれるパートナーこそが、長期的な視点で見たときに企業の財産となります。
社内でのDX推進や内製化にご興味のある方は、こちらの記事も参考にしてみてください。


見積もりは明確で納得できるか
システム開発には、決して安くない費用がかかります。
だからこそ、提示された見積もりの内容が明確で、納得できるものであるかは、厳しくチェックする必要があります。
注意すべきは、「システム開発一式」のような、内訳が不明瞭な見積もりです。
たとえば、エンジニアの人件費やサーバーなどのインフラ費用、ソフトウェアのライセンス費用など、何にいくらかかるのかが項目ごとに記載されているかを確認しましょう。
また、初期の開発費用だけでなく、導入後に発生する運用・保守費用や、将来的な改修にかかる費用の概算も含めた「TCO(Total Cost of Ownership:総所有コスト)」で比較検討することが重要です。
初期費用が安く見えても、ランニングコストが高額で、結果的に他のベンダーよりも割高になってしまうケースは少なくありません。
稟議を通すためにも、費用の内訳と、その投資によってどのようなリターンが見込めるのかを明確に説明できる、透明性の高い見積もりを提示してくれるパートナーを選びましょう。



4つの評価軸すべてクリアしている会社なら信頼できますね。
AiPHAでは事業目標達成への道筋を共に考え、将来の拡張性も見据えたシステム開発が可能です。
システム開発の費用や選び方について、より詳しく知りたい方はこちらの記事もおすすめです。


SIer 4種類の違いと特徴|メーカー系・ユーザー系・独立系・外資系
SIerと一括りに言っても、実はその成り立ちによって「メーカー系」「ユーザー系」「独立系」「外資系」という4つの種類に分類できます。
それぞれのタイプに得意なこと、不得意なことがあり、その特性を理解すると、自社のプロジェクトや文化に合ったSIerを見つけやすくなります。
ここでは、それぞれの違いと特徴を表形式で解説します。
種類 | 特徴 | 強み(メリット) | 弱み(デメリット) |
---|---|---|---|
メーカー系 | パソコンやサーバーなどのハードウェアメーカー、またはその系列企業。 | 親会社のハードウェアやソフトウェア製品に関する知見が豊富で、それらを活用した大規模で安定したシステム構築が得意。ブランド力による信頼性も高い。 | 親会社製品を優先的に提案する傾向があり、ベンダーロックイン(特定の業者に依存する状態)に陥りやすい。技術的な制約を受ける可能性がある。 |
ユーザー系 | 商社、金融、製造など、IT以外の事業会社が情報システム部門を独立させてできた企業。 | 親会社の業界・業務知識に精通しており、特定の業種に特化した実践的なソリューション提案が得意。ユーザー目線でのシステム構築が期待できる。 | 親会社の業界以外のプロジェクト経験が少ない場合がある。親会社の企業文化が色濃く、体質が古いケースも。 |
独立系 | 特定の親会社を持たず、独立して事業を展開する企業。 | 親会社の製品や方針に縛られず、さまざまなメーカーの製品や技術を自由に組み合わせて、顧客にとって最適なシステムを中立的な立場で提案できる。 | 特定の製品に関する深い知見がメーカー系に劣る場合がある。企業によって技術力や得意分野の差が大きい。 |
外資系 | 海外に本社を置くグローバルIT企業の日本法人。 | グローバルで実績のある最新技術や、ERP・CRM等のパッケージ製品の導入に強みを持つ。標準化された開発手法で、大規模プロジェクトでも品質を担保しやすい。 | パッケージ製品がベースのため、日本の商習慣に合わせた細かなカスタマイズが苦手な場合がある。また、仕様変更への柔軟性が低く、追加費用が高額になることも。 |
このように、それぞれのSIerにはメリット・デメリットがあります。
自社の課題によって、最適なパートナーは変わってきます。自社の課題と失敗しないパートナーの軸を参考に選び、プロジェクトを成功に導きましょう。
SIerとシステム開発会社の違いを理解して、最適なパートナーを見つけよう
本記事では、SIerとシステム開発会社の違いから、それぞれの得意分野、そして失敗しないための具体的な評価軸までを詳しく解説してきました。
両者の特性を正しく理解し、自社のプロジェクトの目的や規模、そして将来のビジョンに合わせたパートナーを選ぶことが、DX推進を成功させるための第一歩です。
株式会社AiPHAでは、お客様が抱える課題のヒアリングから、事業目標達成に直結するご支援、そしてAIをはじめとする技術を統合したシステム開発まで、お客様のDX推進を一気通貫でサポートします。
「開発に対するリテラシーがない」「どこに相談すれば良いかわからない」といったお悩みをお持ちの企業様こそ、AiPHAにご相談ください。
私たちは、お客様の既存の業務フローを深く理解し、それに最適化されたシステム構築を得意としています。
単にシステムを作るだけでなく、導入後の運用コストまで見越した費用対効果の高い提案をいたします。



「開発に対するリテラシーがない」「どこに相談すれば良いかわからない」とお悩みなら、AiPHAにお任せください。
課題のヒアリングから運用コストまで見越した費用対効果の高い提案をいたします。